じっちゃまライブ2020年4月29日 「最後の貸し手」としてのFRBまとめ

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FRBの役割、本来の起源について”じっちゃま”広瀬隆雄さんが解説されています。2020年4月28日~29日のFOMCを控え、新型コロナウイルス蔓延による景気対策としてFRBが打ち出した政策の整理と、打ち出された政策の意図をFRB設立の背景・歴史と併せた説明をされています。

テキストでの紹介で内容を完全に再現できていませんので、是非動画をご覧ください。

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じっちゃまライブ2020年4月29日 「最後の貸し手」としてのFRB アメリカにおける銀行と中央銀行の歴史、FRBの設立背景、今日の政策に至る意味合い

最後の一言にしびれますのでしつこいですが是非一度は動画見てください!

2020年4月28日~FOMCに向けて FRBの発表は?

きょう「FOMC連邦公開市場委員会」の日。(2020年4月28日―29日)

何も予想していない。

「政策金利」も動かさない、「新しい政策」も発表されないだろうと思っている。

むしろ大事なのは「記者会見」

パウエル議長がこれまでにFRBが繰り出したいろいろな金利政策、支援策を総括、整理する必要がある。

市場参加者の注目は「記者会見」に集まるのではと考える。

※管理人追記:結果的にFOMCでは「政策金利の維持と、量的緩和の維持」を発表しています。つまり、上述の予想の通りということです。

これまでに新型コロナウイルスの問題に直面して、FRBが繰り出した政策は何だったか、整理する。

これまでに新型コロナウイルスの問題に直面して、FRBが繰り出した政策は何だったか、整理する。

  1. 政策金利そのものは、実質ゼロ金利。Federal Funds Rateは0~0.25%に引下げられた
  2. 賃金保護プログラム流動ファシリティPPPLF(財務省が中心になっている中小企業に対する融資を銀行を貸しつけた後、その債権をFRBが買い上げるのでどんどんFRBに持ち込みなさいと、銀行のバランスシートを軽くして、もう一回追加で貸し付けをできるようにする)
  3. 地方商店街拡大貸付ファシリティMSELF
  4. 地方商店街新規貸付ファシリティMSLNF
  5. 既発債を購入するSMCCF
  6. 新発債を購入するPMCCF
  7. 資産担保証券を購入するTALF
  8. 州・市・郡などの地方政府が発行する手形を購入するMLF

2~8については「あらゆるローンをFRBが買います」という発表を意味する。

ある意味FRBが「禁じ手を使った」「ヤバいことをした」と市場関係者が受け取っている

なぜか。

特定の発行体の出した社債をFRBが買う、買わないと、えこひいきしたら、起業が潰れる/潰れないの運命をFRBが握っていることになる。これはまるでFRBが神のように振る舞うこと、「それってどうなの?」という批判の出やすいポイントである。

批判に対して、パウエル議長は4月9日ブルッキングス研究所(シンクタンク)で以下のスピーチを行った。

「何人も自分に降りかかってくる試練を選ぶことはできない。運命、そして歴史が試練を我々のところに持ってくるのだ。その時に我々が出来ることはただ一つだ。その挑戦に立ち向かえ。」

ということを言った。

つまり、FRBは好きで上記のような対応をしたわけでは無い。アメリカ経済が激しく試されている試練に対しチャレンジしているという状況。これが好感されアメリカ株は上がっている。

「FRBの任務の拡大ではないか?本来FRBって金利の上げ下げだけしていればいいんじゃないの?なんで社債やローンまで買うの?逸脱してない?」と指摘される点について語りたい。

なぜか。この部分を理解しておくのは非常に重要だから。

そもそもFRBはなぜできたのか。FRBの本来の設立趣旨とは何かについて説明したい。

FRBの設立までの歴史①合衆国銀行の設立と解体の歴史

FRB=アメリカの中央銀行だが、いまのFRBは実は「中央銀行バージョン3」的なものである。バージョン1,2があったが不評で取り潰した過去がある。3度目の正直がいまのFRB。

1回目の中央銀行は誰が作ったか?アレキサンダー・ハミルトン。

「建国の父」ジョージ・ワシントン、ベンジャミン・フランクリンたちが1776年独立宣言をした時のメンバーの一人でビジネスについて一番明るい男。「ニューヨークを作った男」と呼ばれ、「ニューヨーク」「ビジネス」「バンキング(銀行業)」とかかわりが深い人物。究極のバンカー。

JPモルガンなど著名な銀行家はアメリカにたくさんいるが、その中の「大ボス」がアレキサンダー・ハミルトン。

アレキサンダーハミルトンが1791年に「合衆国銀行」というものを設立した。「合衆国銀行」には反対する人が多く、たとえば、ファウンディングファザーの一人、トーマス・ジェファーソンは反対していた。

銀行の定款の更新期間である1811年に議会を通過できず更新ができず、合衆国銀行は解体となった。

その後アメリカはハイパーインフレとなり、「合衆国銀行が必要」という意見が再び発生し、「第二次合衆国銀行」が設立される。

その第二次合衆国銀行も反対派からの攻撃をうけ、1836年に定款の延長に失敗し、自然消滅。以降アメリカは中央銀行が無かった。

FRBの設立までの歴史② アメリカ人の銀行嫌いの理由 農業による借金=銀行というイメージ

なぜアメリカ人は根強く「銀行嫌い」なのか。

もともとアメリカ大陸には白人は住んでおらず、ヨーロッパ人が移り住んでいた。その時にボストン周辺などアメリカの北東部はイギリスの植民地だった。イギリスが植民地政策としていろいろな統治機構をアメリカに持ち込んだ。

当時のアメリカは農業を基盤とした経済で、非常に広い土地があった。しかも生産性の高い土地であった。アメリカに行けば土地がもらえる。そこで農業すればいいと自由を求めてアメリカに移り住む人が居た。

ただ、唯一アメリカで農業をするうえでのネックがあった。それはスケールの大きい農業であることに由来する。農機具、タネなどいろいろな道具を買う必要があった。アメリカの能動は労働集約的ではなく、資本集約的だった。

  • 労働集約的…日本の農業。限られた農地にたくさんの人(主に家族)総出で手間暇かけて野菜を作る。手がかかっている。大型のトラクターなどが要らない農業。
  • 資本集約的…スケールがバカでかく、隣の農家が見えないくらいの広大な農地。家畜やいろいろな機械がいる。

アメリカの農業を始めるのに借金をする必要があり、銀行に行く必要があった。

銀行=借金=つらいというイメージが根強く植え付けられていて恨み、つらみ、ネガティブなイメージはアメリカの産業の在り方に密接に関係していると思う。

FRBの設立までの歴史③ アメリカ人の銀行嫌いの理由 金本位制度と発券銀行の歴史

それだけでなく、「金本位制度」がアメリカの銀行に対する世間の「胡散臭い目」を定着させる原因を作ったのではないかと考えている。

アメリカは金本位制度だったが、金は重いため流通がカンタンにはできない。「金を背景に紙幣を発行していい」アメリカでは各州によって免許が出された(日本でいう地方銀行が発券銀行となった)

発券銀行…今では香港上海銀行・スタンダード&チャーター銀行は政府から「紙幣を刷っていい」という特許を得ている。

昔はアメリカはどこの町の銀行も発券銀行だった。「ドル」と書いてあっても実際は「○○州のドル」というようなブランドがあった。

金生産自体はアメリカ経済の発展に追いつかなかった。そうすると信用不足になる。通貨は経済の拡大と二人三脚で増えていく必要があるが、金の生産は1849年にカリフォルニアで金が発見されたあとは金生産が増えたがそれ以前は金の量はすごく限られていた。

地銀は準備しているリザーブ(金)がないままに紙幣を刷っていった。国民は「この銀行のドル紙幣はちょっと信用ならない」と思いながらもだましだまし、紙幣を使っていた。

地元の銀行は発券した紙幣を提示したらそれは取るしかないが、よその(遠いところにある)紙幣は信用ならないと皆思っている状態。昔アメリカで旅人が移動するということの意味するところは、故郷から離れれば離れるほど、もともと持っていた紙幣の価値が下落していく、ということを意味した。旅行というものが難しかった。銀行のドル紙幣というものが究極的にはIOU(借用証書)に過ぎないということだったから。ほかの銀行が発行したドル札が持ち込まれた時に規定通りに換金することを避けた。

これら2点が銀行を胡散臭いものだと思うようになった背景と考えている。

アメリカでは南北戦争のころまで、1,390くらいの銀行が営業していて、ドル札の種類は8,000種類くらいあった。○○銀行ドル、××銀行ドル・・・という具合に色んな種類があった。それを中央で一括して管理する組織(中央銀行)が無かった。

FRBの設立までの歴史④ 金融危機と経済バックストップ機能としての中央銀行の必要性。「The Lender of Last Resort」=最後の貸し手としてのFRB

金融危機、例えば1893年金融危機のときは、360の銀行が次々に倒産していった。そのとき、ドル紙幣をゴールドに交換してくれという取り付け騒ぎが起こり皆が銀行の店舗に押し寄せたが、ゴールドが底をつき、換金に応じられず金融崩壊が起こる、という状況を招きかけたが、1893年のときは大統領がJPモルガンに直談判に行き、政府の発行する30年債を買い取ってもらい、JPモルガンがゴールドを財務省の金庫に移し、庶民をなだめる、ということをした。

つまり、JPモルガンが最後の貸し手(英語でThe lender of last resort)としてアメリカ経済をバックストップする機能をした。

それは本来では中央銀行が果たすべき役割だが、アメリカには駐豪銀行が無かった。だからJPモルガンという個人銀行がその役割を行った。

1906年サンフランコ大地震が起きた時、保険会社が震災保険を払い出す(被保険者である市民が保険金を受け取る)ため、サンフランシスコの銀行から紙幣が消える、ゴールドが払底してしまうということが起きた。

慌ててニューヨーク、ヨーロッパからゴールドを買い付け、大急ぎでサンフランシスコに急送した、というエピソードがあった。アメリカの政治家は「やっぱり中央銀行は必要、もう1回作り直そう」と計画し始めた。

ポール・ウォーバーグ(ウォーバーグ家は”ロスチャイルド””モルガン”のようなバンキングファミリーの一つ。ドイツのハンブルグ出身の銀行家ファミリーのメンバーで理論家)が中心となりアメリカの中央銀行構想を打ち立てた。

jekyll island(ジョージア州)、(普通は鴨とか鹿をハンティングしに行くリゾート)に面がーが隠密で集まり、数日間にわたり籠って中央銀行構想を練った。

ウッドローウィルソン大統領時代連邦準備法という法律が成立し、いまのFRB(連邦準備制度理事会)が出来上がったということになる。

FRBの責務と本来の設立趣旨 中央銀行の「伝家の宝刀」の抜き方

結局何が言いたいのか、ということだが、FRBの仕事において議会から求められている責務は

  • 失業率を最小限にする
  • インフレ率を2%前後に固定する

という2つの使命である。ほとんどのウォール街関係者、金融関係者、投資家はそれがFRBの仕事であると頭から思い込んでいる。でも、そうではない。FRBが設立された「そもそもの理由」というのは最後の貸し手「The lender of last resort」として経済をバックストップする。「パニックが起きたら俺のところに持ってこい、俺が貸してやる」という風にふるまう存在である。

冒頭の説明である、「『社債』『ローン』『市町村の手形』もってこい、俺が買ってやる」とうのは「越権行為」ではない。「設立趣旨」である。それを批判することはできないと思う。

実際に「FRBがジャンク債を買ってけしからん」という意見があるが、これまでFRBが実際にジャンク債を買った量はどのくらいか。「ゼロ」である。

FRBは「買うよ」と一言いっただけに過ぎない。その一言だけで今までパニックに陥っていた投資家たちは、

「FRBが買うの?これは安心なのね?OKなのね?」と受け止める

これによりマーケットのパニックは収まり正常化した。

FRBがジャンク債を買うまでもなくマーケットは正常化した。

一例としてダイヤモンド・プリンセス号のオーナー、カーニバルという会社はクルーズ船のストップにより倒産しかかっている。「いつ倒産するんだ」と「ハゲタカ」ファンドがカーニバルの上空を旋回し、「金利16%なら貸してやる」とそれらPEファンドが要求した。

※PEファンド=private Equity Fund とかっこいい名前だが究極的にはやっていることはサラ金。

カーニバルはもう少しのところでサラ金の餌食になりそうになった。そんな時FRBが「社債もローンも買うよ」「うちから直接融資しますよ」「駆け込みなさい」ということにより今まで取っ組み合いをしていた連中も喧嘩をやめ、メガバンクがうちなら8%で貸しますから、といった具合に手を差し伸べ、カーニバルはファンドの餌食になることもなく、FRBへ駆け込むこともなかった。

そういう風に中央銀行の「伝家の宝刀」は抜く。

感想

控え目に言って「神回」だったと思います。

ご説明の中で歴史的背景からFRBの本来の趣旨=最後の貸し手。つまり皆が経済的にパニックに陥っているときの終息と、有事の際の調整役、これらの意味を理解できました。

今後経済的に何らかのトラブルが発生、FRBが政策を打ち出した際にも1913年に設立に至ったFRBの本来の役割とは何なのか、を知ることで不要な不安に掻き立てられることもないと思います。

「何人も自分に降りかかってくる試練を選ぶことはできない。運命、そして歴史が試練を我々のところに持ってくるのだ。その時に我々が出来ることはただ一つだ。その挑戦に立ち向かえ。」

ということばで世界に希望を与えるパウエル議長は金融政策に関してもですが、スピーチ力も超一流なんだなと思わされます。

今回のFRBは中央銀行としては3つ目ですが、設立100年を超えアメリカ・世界経済を数々のピンチから救っています。

投資において3という数字は意味があり、例えばチャートパターンでも3つの点から支持線や抵抗線を引くことはより強いシグナルだという説明があります。※点が2つあれば何でも線は引けてしまうが、3つの点が線を成すということは偶然ではないという意味と捉えています。

日本語でも「石の上にも3年」、「3人寄れば文殊の知恵」、「2度あることは3度ある」のようにとりわけ「3」というものは何かを確実にするために重要な数字という意味の表れだと思います。

FRBに関しては、まさに3度目の正直という形でこれからも世界経済を支えていてほしいと願うばかりです。

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