質疑応答
一問一答形式の質疑応答です。
7月CPI8.5%だったが、年末3.5~3.75%の政策金利というのは1970年を参考にすると低すぎるのでは?
いい質問。1970年の時にポールボルカー議長がインフレ退治をしたが、着任以前の段階でも政策金利のほうが消費者物価より高かった。今はそれが逆になっている。物価+8.5%、政策金利は年末で3.4%とか3.5%とか。
全然政策金利のほうが低い。その部分の指摘だと思うがその通りと思う。
一応3.4~3.5%という政策金利の水準はエコノミストの間ではニュートラルレート、つまり景気にも悪影響を与えないがインフレも誘発しないちょうどいい湯加減と言われている。
そのコンセプト自体がかつては2.5%だったが、2.8%になり、今は3.4~3.5%になり、概念以外の何物でもないが、目先はそういうターゲットを皆念頭に入れて動き回っているということ。
そんな空気みたいな根拠レスなターゲットなんて意味ないじゃないか、という市場参加者もいる。
でもまったく意味がないとは僕は思わない。
どうしてかというと、景気は気からという言葉があるが大事なのはセンチメント、信頼感。
トークの力でFRBはこうしようとしていますよ、年末までに政策金利は3.5%までに持っていき、たぶんそれでインフレを誘発しないと思うので、もうインフレが来る、インフレが来る、とあたふたしないでください、というトークによって市場価格に働きかけようとしている。
いま、10年債利回りで2.8%くらいと思うが、その水準に長期金利があるということは皆が考える長期でのインフレ率はそれほど高くない。
かたや政策金利3.5%、消費者物価8.5%、てんで間違えている、という指摘があるかもしれないが
大部分の市場参加者はそう考えていない。
長期で見ればそのくらいに行くんだからあたふたするなよ、と大部分の債券市場の参加者は考えている。
一つのデータポイントだけを見るのではなく多数のデータを見て総合的に判断をして市場参加者がどう考えているかを図る必要があると思う。
なるほどインフレ率と政策金利の設定は全然間違えていて、笑えちゃうくらいゆるふん。
でも投資家の多くはアメリカの成長ポテンシャルはそれほど強くない、だから普通にしていれば経済は自然とへ垂れてくると多くの人は感じている。
その前提では政策金利年末3.5%でちょうどいいのでは、という議論が戦わされている最中。
誰が正しいかはわからない。ひょっとしたらマーケットは間違えているかもしれない。
でも間違えていないかもしれない。
半導体関連は?
あまりよくないと思う。エヌビディアが見通しを大きく下方修正した。
背景にゲーミング向け半導体の市況暗転。チャンネルパートナー(卸)が、グラボの在庫圧縮のため新規購入を絞り込んでいる。
Q2予想80.9億ドルの予想に対し、67億ドルの新ガイダンス グロスマージン旧ガイダンス67.1%➡46.1%
いずれも思い切り下がった。
なぜマージンが下がるかというとグラフィックボードの値段は高値から半値くらいになっている。
新品の製品価格も市場実勢価格に合わせて下方修正しないと新しいGPUが売れない。
だから値引きをしている。
その値引きの結果グロスマージンがぶっ殺される。
そしてチャンネル在庫の過剰はQ3も続くと会社側は言っている。
もう一つ、データセンター向け売上高は今過去最高水準だが、実際の計画よりも下回ったというコメント。
加えてQ3はデータセンター向けに13億ドルの評価損が計上される。値引きとかそういう理由で今抱えている在庫がマーケットの実勢価格を反映していない形で帳簿に乗っているという現象が起きていると思う。
半導体の相場は動いている、需要は陥没している、新品のGPUは売れなくなっている。安売りしなければいけない。数量的にもマージン的にも×。
エヌビディアは押しも押されぬ半導体のNo1企業。これほどイノベーティブで高いトップライン成長をして儲かっている銘柄はない。リーダーがこの状況ならあとは推して知るべし。
半導体はシクリカルなもの。市場が暗転したら頭を切り替えないといけない。
新型コロナで在宅勤務でやることがなくみなネトゲをやりゲームPCの買い替え特需などがあったが、
今特に面白いソフトはなく、ハードの買い替えをしない切迫感はない状況。なんでその時にエヌビディアを買う?
10年債利回りが安定してきて良くない決算の銘柄でも相場は安定している?
そうだが、ごくごく直近の10年債利回りや原油価格は上がり始めている。周期後れでは。
僕は原油ロングしている。米国経済が弱くなく、景気がソフトランディングならなんで原油価格が80ドル台なの?そうならば、90ドル、100ドル、110ドル台が今の国際情勢なら適正では?石油株のプライスが適正でないと思う。
ネット株が今買われているのが偽りの割安感かも。なぜそう思うか。アマゾンは7%成長、ネット広告は12%、オイルメジャーは70%成長。もちろん下がってくると思うが。原油価格が下がってくるので。
それでも7%や12%より高いと思う。その時にPERを比較したら石油株は7~10倍、ハイテクは15~30倍なら石油株のほうが安い。
みんなはまだ長期ブル相場の時につけた悪い癖、バイオンザディップ、押し目は買いと普通にしていればハイテク株のバリュエーションのほうがオールドエコノミーより常に高いという先入観が強い。
だけれど僕がアメリカ来たときは必ずしもそういうバリュエーションではなかった。
ITが一番バリュエーションが低く、ハイテクは買ってはダメ、日本勢にやられるからとまことしやかに言われていたのが、1980年代終盤、1990年代前半。
1996年に僕はH&Qに転職したが、そこの投資銀行本部の本部長は女性でクリスティーナモーガンという人だが、彼女はここ数年間はハイテクバンカーをしていて、これほど寂しい思いをしたことは無い。
ディールは少ないし、株式バリュエーションは安すぎるし、ディールのサイズは小さいし、ウォール街は阿波踊りだが、サンフランシスコは陰の極、テクノロジーバンカーなんて職を間違えた、数字が一桁小さい、とIBDの総責任者が僕に言っていた時代がある。
その暗いテクノロジーが顧みられない時代もあった。今は皆は去年までのイケイケ相場のノリで普通にしていたらテクノロジーのバリュエーションは戻って当然と決めてかかっている。
僕は全然決めてかかっていない。ドットコムバブルが崩壊したとき、テクノロジー株のバリュエーションは1年やそこらで戻らなかった。3年くらいのたうち回て忘却の彼方に忘れ去られたギトギトした状態が続いた。今回もそうなると思う。
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