九条の大罪 第6審 弱者の一分⑤ 感想  

真鍋昌平 ビッグコミック 九条の大罪 漫画

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登場人物
  • 曽我部 聡太(そがべ そうた) 配達員 壬生の後輩の下の人間らしい
  • 九条 間人(くじょう たいざ) 弁護士
  • 烏丸 真司(からすま しんじ)九条の事務所のイソベン(=居候弁護士。弁護士事務所に雇われている弁護士のこと)
  • 壬生 憲剛(みぶ けんご)自動車整備会社社長・コワモテ
  • 金本 卓(かねもと すぐる)大柄な不良 力士を目指していたらしい 父がヤクザ
  • 薬師前 仁美(やくしまえ ひとみ) ソーシャルワークつぼみ代表の女性。烏丸の知り合い

九条の大罪 第6審 あらすじ ネタバレ注意

曽我部がコカインと大麻の営利所持目的で現行犯逮捕された。

九条に烏丸が帯同し、曽我部と面会している。いずれも仕分け後で量が少ないので保釈は取れそうだが累犯前科があるので実刑は免れないようだと九条から説明を受ける。

共犯として金本も逮捕されたことも九条に聞かされる。

金本の事はしゃべらずに全ての罪を被るよう九条が説明する。

金本は取り調べにも完全黙秘をしているようだ。ただ、眉をゆがませた眉間のコマがあり、これは金本の眉ではないかと思われる。

取り調べを終えて、九条と面会する金本。

曽我部がうたった(=しゃべってしまった)かを九条に聞くがそれは無いという。

九条は携帯のパスコードは教えるなとのアドバイスする。

警察サイドは「通話履歴」について「捜査事項照会」をかけて入手できるが「アプリ」などはロック解除して解析が必要だかららしい。

嘘はばれる 絶対になにもしゃべるな と念押しをされる。

金本は少し弱っているようだ。

その様子をうかがってか、取り調べで聞かれたことを毎日大学ノートに書き留めて20ページ目、すなわち20日後にはは出られると伝える九条。

二人は曽我部の家へのガサ入れで捕まったらしい。

壬生から電話だ。腕にはびっしりと刺青が入っている。

壬生も曽我部がうたったのかを確認している。

今回の事件は「営利かどうかが」ポイントらしい。

コカイン3gの「営利目的所持」→実刑3年30万程度の罰金

自分のために持っていた→実刑一年半かつ罰金無し

という状況を整理して伝える。

金本はコカイン触るのが初めてで、なにかあっても曽我部に押し付ければ良いと思って軽く見ていた、詰めが甘い野郎だと呆れる壬生。

九条は罪を全て曽我部にかぶらせ、金本は完全黙秘で無実にすることが着地らしい

それが出きれば天才だと感心する壬生。

つづく

逮捕される曽我部と金本。今回は取り調べ中。

逮捕をされた後は僕も何となく檻のようなところに入れられて取り調べを受けて、そのまま刑務所に行くみたいなイメージをしていたが、正確には以下のフローのようだ。

おそらく、今回はこの「取り調べ」の段階で、特にパイ(無罪)を狙う場合、金本は20日間耐える必要がある。

これはかなり長く感じるのではないか。

そういった心理を見越して、九条は金本に大学ノートという具体的な策を授けているようだ。

私服っぽい壬生。ファッションは輩系で獅子谷兄弟の「悶主陀亞連合」みたい。

壬生がTシャツ姿を披露した。

ついでにいうと、黒Tシャツ、スウェット、ネックレスや高そうな時計、バッシュというスタイルで、ウシジマくんの獅子谷兄弟のようなファッション、というか獅子谷(兄)とそっくりである。

知らない人のために少し補足すると真鍋昌平先生の人気作品であり、九条の大罪の前にスピリッツに連載していた「闇金ウシジマくん」には「悶主陀亞連合」というチームがあった。

チーマーというのか暴走族というのか分からないがこの軍団には

獅子谷兄弟=兄は総長、その後半グレ。弟も半グレ。

滑皮=総長・その後ヤクザ

などウシジマくんでいうインパクトのあるボスキャラ的存在たちを輩出しているエリートヤンキー集団であり、その中でも半グレの獅子谷というのはちょっとおしゃれで現代風の輩であった。

服装が同じというのはある意味性質的にも似通っているのかもしれない。

で、獅子谷兄弟というのも麻薬を扱ったり、人殺しをしたりと一般的なモラルとは対極にいるような人たちだったので、もうこの「壬生」というのは整った顔をしていても中身は血も涙もない男なんじゃないかとすら思える。

奇しくも今回逮捕に至り、壬生と金本は同じように曽我部がしゃべってしまったかを気にしている。

金本は単純に自分の身を案じているというか、曽我部がしゃべってしまうことで事態の悪化をただ恐れているように見えた。

いっぽう壬生は金本を通じたコカインのやり取りについて、どのように漏れ伝わったかを冷静に見極めていそうだ。

どういったペナルティ(もともと壬生は悪いことに加担しているので受けて当たり前だが)が課せられ、どういうリスク管理をしなければならないのか、考えているようでもある。

弱る金本

最初の取り調べのシーンでは男らしく着座しているように思えた金本だが、その後を見ると完全に日和っている様子である。

金本が日和る要因として

  • 今回逮捕されてしまい、実刑を受けること
  • 自分が原因で上の人にも迷惑をかける恐れがあること

なんかがある。

今回は圧倒的強者に思えた金本の弱さがいろいろと露呈するシーンが多かったが、これは無罪になっても壬生周りの人間からキツイお仕置きを受けるのではと思っている。

営利目的での所有か、使用のための所有か。論点

これについては概ね2つ前の記事で考察した内容だった。

とりあえず「使用」にであることがベターであるようで、現実的には曽我部は「使用」していないと思われるし、「使用目的」での所有をしているわけでもない。

しかしながら、すべてを丸く収めるためには「使用目的での所有」と判断される必要がある為、これに対してどんなやり取りが発生するのかが見どころである。

黙秘を続ければ理由が分からないので「罪の思い商用と断的出来ず、使用目的に分類」となるのかもしれない。

着地は曽我部一人が罪をすべて被る。九条間人の判断。

九条の判断は冷静で合理的である。

前回の記事で、九条はもしかしたら罪を受け入れたい曽我部を無罪あるいは軽微な罪にしてしまうというようなことをする展開もあり得るかと思うと書いたが、全くそんなことはなかった。

このチーム金本だかチーム壬生だか分からないが、事件にかかわる集団の被害が最小限になることのみを考えているようで、そのためには曽我部が一人ですべての罪を被るという着地を目指すとした。

実定法と自然法。「自然法思想」と「法実証主義」

九条の大罪に関するブログを見ていると、「法実証主義」という言葉があった。

九条の第1審で述べた

私は法律と道徳は分けて考えている。道徳上許しがたい事でも依頼者を擁護するのが弁護士の使命だ

ビックコミックブロス 九条の大罪 1話 より引用 https://spi.tameshiyo.me/KUJO01SPI/?page=57

というセリフが「法実証主義」にあたるらしい。

法実証主義の対極の概念として自然法思想というものがあり、以下のようなもののようだ。

 法というものは人間が実際に社会生活の必要上から社会規範として作り出したものであり、その時代と社会の実情に応じてその内容もさまざまである。このように、現実に人間社会で定立され行われている法を実定法という。これに対し、人間が人間である以上、人間社会が人間社会である以上、人間の法定立行為に基づかなくとも、時代を超え場所を超え普遍的に妥当する正しい法が存在する、という考え方が、法学には古代ギリシアの昔からあり、21世紀の今日でも一部にある。この法が自然法であり、このような考え方を「自然法論」あるいは「自然法思想」という。だが、自然法の存在を肯定する論者の間でも、自然法の法規範の内容および自然法の根拠が何であるかについては、その学説が一様でない。しかし、自然法論者に共通しているのは、自然法はその普遍的な正しさと妥当性ゆえに実定法より高次元の規範であり、実定法の基本原理としてそれに妥当の根拠または基準を与えるものだと考えることである。したがって、自然法に反する実定法は無効という帰結になるから、自然法論は悪法批判に有効な理論根拠を提供する*1。このような自然法の存在を認めるか否か、また、法の概念の中にこれを含ましめるか否かについては、議論が分かれている。一方、自然法の存在あるいはその認識可能性を否定し、法の存在が認識可能な実定法に法学の対象を限る立場を「法実証主義」あるいは「実定法主義」という。

公務員試験のための教養 実定法と自然法 より引用

・・・むずい。

メチャクチャ口語体で述べると、

定められた法律は実定法という。

法律は道徳に従って作られており、正しい概念は一定存在するはずだ。このように定められた法律は、自然法といい、自然法であるという主張を自然法思想という。

でも、道徳の解釈っていろいろあるじゃないか、例えば小学生をあつめて、太郎さんが命令して二郎さんが花子さんを殴った。悪いのは誰?と聞いたらどうなる?

  • 命令をした太郎さんかもしれない
  • 女の子に暴力をふるった二郎さんかもしれない

ほかにも意見は分かれると思うけれども、少なくともこれらの答えが100:0で太郎が悪い、二郎が悪いと決まらない以上、法というものは認識可能な限りの解釈以外存在しない。

という考え方が法実証主義のようである。

先ほどの小学生の例ではないが、この話を全て見える範囲で解釈すると、「誰が悪い」という問いかけに対し、ほとんどの人が「金本」と答えるような気がする。

しかしながら、金本側ももしかしたら更なる上に脅されてやったことなのかもしれないし、そういった事や善悪・モラルというものについては弁護士のカバー範囲外としてとらえており、依頼者を擁護するのが九条の役割と捉えているようだ。

もしかしたら九条は過去に善悪で物事を判断して失敗した経験などがあったのかもしれない。

九条の大罪 第7審 弱者の一分⑥以降の展開

もう九条が弁護する以上、九条のプラン通りに曽我部が罪を全被りすることは確定したのではないか。

とにかく九条は有能そうだ。

しかしそうなると、このストーリーのタイトルである「弱者の一分」というのが何なのか気になる。

前回、今回と曽我部の心理描写は少し描かれているものの、

弱者が本当に曽我部なのか、一分という言葉を「いちぶん」と読むのであればそれを意味する面目とは何なのか、着地が楽しみである。

真鍋先生の作品はショックであったりじんわりとした実感であったり大体結末には人の感情を動かすつくりになっているので、結末がどうなるのかが楽しみだ。

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